巨匠の気まぐれ Victim of Love / Elton John ('79)

 今日は珍しいアルバムを。

 1979年といえば、世は「サタディ・ナイト・フィーバー」(ひょっとして知らない人が多かったりしてw)を契機としたディスコ・サウンド全盛期であった。そのヨーロッパの中心であったドイツ・ミュンヘンのプロデューサー、ピート・ベロッティーをパートナーに迎え、ディスコ・サウンドを全面にフィーチャーしたアルバムを作ったのが、当時押しも押されぬビッグアーチストであったエルトン・ジョンである。

 それはアルバムの片面すべてをメドレーでつないだ意欲作だ。余計な装飾を排し、ドラム・ベース・ギター・キーボードのシンプルな構成のバンドであるが、

 これがただ者ではなかった!パーソネルは

・Kieth Forsey : drums
Marcus Miller : bass
Steve Lukather : guitars
Elton John : keyboards

である!ブレイク前のマーカス・ミラーと新進気鋭のスタジオ・ミュージシャンのスティーブ・ルカサーが共演!しかもかのマイケル・マクドナルドもコーラスで1曲参加という、ミュージシャン好きには注目のメンバーだ。

 ちなみにドラムも単純なディスコビートではあるが、特筆すべきはハイハットワーク。”チッチキチッチキ”という16分シンコペーションをベースに、ドラムマシン顔負けの正確なリズムを刻んでいる。加えて時おり混ぜるオープンハイハットのタイミングが絶妙!

 ベースはシンプルなチョッパープレイだが、後にこの方の名物となるアクセントのプリングが所々聴けて興味深い。当時の若い私には派手なチョッパープレイは珍しく、大好きでソロパートを何度も繰り返し聴いた覚えがある。

 さて、ルカサー師匠はやや歪みを抑えたややクリーンなサウンド。ソロは2曲で取っているが、注目はトラック3、"Born Bad"でのソロだ。この16小節のソロには、弾きまくる早弾きはないものの、メロディックなフレーズは後に世を席巻した「ルカサーフレーズ」と呼ばれるパターンが満載で非常に気持ちいい。個人的に師匠名演の1つである。ああ、ギターがあればコピーしたい...。

 という、聴き応えのあるトラックに乗って、エルトンが気持ちよく弾き歌う。個人的には好きなアルバムだが、世間のウケはよくなく、セールス的にも振るわなかった。とはいえ今でもスマホのライブラリではよく聴くものだ。久々に聴く機会を与えてくれたKKBOXに感謝。

Victim of Love

Victim of Love