ギターの先生、さようなら...:松原正樹氏、逝去(61)

 ギタリストの松原正樹氏がガンのため死去。61歳だった。

 氏はスタジオミュージシャンとしても有名で、ユーミンを始めとして松田聖子松山千春等のポップミュージックに印象的なギターサウンドとソロを提供してくれた。有名な曲例を挙げれば、



 ・松山千春:長い夜

 がある。かように多数の曲に参加しているので、氏とは特定していなくても、サウンドやフレーズは耳にしたこともあるはずだ。

 松原氏は80年代初めのスタジオミュージシャンブームに乗って登場し、当時のユーミンのアルバムに起用されて有名となった。自分が印象に残っているのは、ユーミンのブレイクのきっかけとなった傑作アルバム"Surf & Snow"に収録された今でもゲレンデの定番曲「恋人がサンタクロース」のソロである。

 氏のギターサウンドは、当時沸き起こりつつあったスタジオミュージシャンブーム、ギターならジェイ・グレイドン、スティーブ・ルカサーに影響を受けた、


 といったものだ。ルカサーライクなフレーズが特徴の氏であるが、YOUTUBEで見る映像ではセミアコを抱いていることが多い。しかもアンプ+マイクではなくミキサーに直接プラグインするラインっぽい硬質な音も多く、イメージとは異なりジェイ・グレイドンっぽいアプローチが実際には近かったようだ。

 この「恋人がサンタクロース」のソロは、硬質なラインディストーションに深めのコーラス(モノラル)にリバーブの効いたサウンドがクッキリと目立ち、早弾きではなくチョーキングを多用したメロディアスなフレージングが際立っている。

 当時、青二才だった私はサウンドとフレージングに多大な影響を受けた。その後大学生になり、ギターや周辺機器を買い揃えていったが、同時期に始めた自宅録音でも、ギターのフレーズはともすれば氏やルカサーにインスパイアされたと思われるフレーズが並んだものだ。

 氏は盟友今剛氏と共にミュージシャングループ”パラシュート”を結成し、ロック系のインストの秀作をいくつか生み出していて、そのツインギターサウンドも興味深く聴いたものだ。

 時を経て、氏のプレイを耳にすることは少なくなったが、時おりソロ活動の映像を見かけては安心していた。それが今回の訃報だ。本当に残念である。

 こうなれば、供養がわりにユーミンの氏をフィーチャーしたアルバム「時のないホテル」を手に入れよう。合掌。

時のないホテル

時のないホテル