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 思い出のお店の話

日常
 中学生の頃、土曜日の昼食は決まっていた。

 午前中に授業が終わり(まだ週休2日ではなかった。)、丘の上にある坂を下り、町に降りると、当時両親が営んでいた店に立ち寄り、昼食代の千円札を握って、坂の登り口にある一軒のラーメン屋に入るのだ。

 8畳ほどの店内に入ると、主人と奥さんが迎えてくれる。いつものラーメンライスをオーダーし、一つしかない座敷に座る。

 ほどなくラーメンとご飯がやってくる。ストレートなとんこつラーメンだ。まろやかな味と細目の麺をすぐに平らげ、ご飯を残ったスープに放り込んで食べる。今となっては殺人的なメニューだが、食べ盛りのガキにはもってこいの食事だった。ライスを食ってスープを完食すると、再び坂を上って午後の部活に向かうのだ。

 中学生の土曜の昼はこれだった。高校進学後は地元を離れ、滅多に立ち寄ることはなくなった。そのうちお店は町の中に移転し、立ち寄ることもなくなった。お店は今もあるが、営業はしていない。お店のご夫婦はあれ以来会っていない。

 こちらに移ってくると、近くにあの店と同じ名前のラーメン店があった。昨日のお昼に行ってみた。お店はとんこつ系のラーメンで、なかなか美味。頻繁にとはいかないが、これからも通うだろう。

 土曜の昼に千円札を握って歩いていったあのお店は、今はもうない。両親がやっていたお店も、今はその跡もなくなっている。向かいにあった洋品店は、もはやどこにもない。坂の登り口の角にあった本屋が、寂れて残っているだけだ。

 ず~っと前の話である。