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凹むなジュニア、次はあるさ。

時事
 お久しぶり。

 一週間ほど空いたが、この間粛々と歩いていた。3日間の苦行を無事に終えて、今日明日はお休みである。

 さて、10日ほど前に開催されたルマン24時間耐久レース。

「敗者のままでいいのか」

 と気合いの入った覚悟を持って臨んだトヨタチームはTS050というハイブリッドマシンを持ち込んだ。近年の常勝アウディはトラブルで出遅れ、強豪ポルシェも苦しむ中、万全のレース運びでレースをリード。レース時間も残り1時間を切り、歓喜の初優勝は確実に思われた...が、レースの残り3分、中嶋ジュニアのドライブするマシンがサルテサーキットのロングストレートに入ったとき、

 エンジンがストップ。

 何が起こったのか状況を理解できず、時が止まったかのように凍りつくスタッフが呆然とする中、ストップしたマシンを2位のポルシェが抜き去り、そのまま優勝。小林可夢偉の乗るマシンが2位に入ったのだった。トヨタの30年越しのプロポーズは、成就寸前になってルマンの女神からこれ以上ない酷い振られ方をくらったのだった。

 このことで思い出すのは、91年のF1カナダGPである。

 最新メカのアクティブサスを搭載し、他のマシンをリードしていたウィリアムズのマシンを駆るイギリスのドライバー、ナイジェル・マンセルは、カナダGPを危なげなく乗り切り、十分なリードを保持し、後はゴールするだけだった。レースはラストラップ。もはや勝利を確実なものとしたマンセルは、リスクを負うレースドライブではなく、優勝した後のようなウィニングランのようなスローペースで、コースで応援するファンに挨拶しながら走っていた。

 当時テレビで見ていた自分は、「ダメだこりゃ。ウィリアムズの勝ちだ。」と思い込み、画面から目を離していた。その時、

「あ~っ!ウィリアムズのマシンがストップ~!」

 マンセルはヘアピンをクリアし、次のストレートヘと立ち上がったところでエンジンがストップ。その後大きく遅れて2位を走っていたマシンに追い越され、優勝を逃したのだった。

 あの時の呆然とするチームスタッフと、憮然としたチームオーナーのフランク・ウィリアムズの顔は忘れられない。「レースは最後まで分からない。」この格言を噛み締めたことだった。

 その後、あの時のストップは、ヘアピンを立ち上がるときに観客に手を上げて挨拶しようとしたマンセルが誤ってハンドル上にあるエンジンのキルスイッチ(停止スイッチ)を触ったのが原因というまことしやかな噂が流れた。通常なら

「バカかあのドライバー!?クビだクビ!」

 と非難が集中するところだが、

「マンちゃんなら、まあ仕方ないかぁ~。(微笑み)」

 というコメントが圧倒的であった。今では考えられないことだが、当時はそういう時代で、マンセルは「愛すべき大英帝国の息子」としてファンの支持を集めたのだった。

 古き良き時代のF1のエピソードである。

 とまれ、トヨタには残念な結果だったが、「101回目のプロポーズ」よろしくアタックし続けて欲しい。

 頑張れ、女神のハートはすぐそこだ。