カラフル・シンセ・カレイドスコープ: Someday Somehow / Steve Porcaro
「以前発表されたものだろ。」
と思い、DLしてもそう真面目に聴いていなかったのだ。ところがネットでこれが氏のキャリア初のソロアルバムと知って驚き、改めて聴いてみるとまあ何と完成度の高いアルバム。
氏の作風は何とも雰囲気のあるコードに叙情的なメロディをメインに、最大の特徴である細かいシーケンスフレーズが散りばめられているところ。普通ならとっ散らかるところだが、フレーズを俯瞰的に見渡すことのできる「ヤダ・シート」と呼ぶもので巧みに整理しており、各フレーズが異なるシンセの音色で奏でられ、総合的に万華鏡(カレイドスコープ)のような空間的な音像を作り出している。
公式サイトのニュースによれば、83年以来書きためていたものの集大成で、時期的にももういいだろうということでリリースしたとのこと。配信曲目リストは以下の通り。
01. Ready Or Not
02. Loved by A Fool
03. Someday / Somehow
04. Swing Street
05. She's So Shy
06. Back To You
07. Face of A Girl
08. To No One
09. Make Up
10. She's the One
11. Night of Our Own
12. Painting by Numbers
13. More Than I Can Take
どれもミッドかよりゆったりしたテンポの落ち着いた曲で、夜に聴くのによい。使用機材は、以前紹介した教則ビデオでもヤマハ、ミニムーグ、オーバーハイム、イーミュと多岐に渡っていたが、現在のTOTOのライブフォトを見ると、ヤマハのフラッグシップMotifXFを使用しているようだ。内蔵音色が1000はあろうかという大容量ライブラリにエフェクトを加えれば、ドラムサウンドも生に遜色ないクオリティができるだろう。羨ましい。
個人的に聴き応えがあったのは、以下の曲。
04. Swing Street
聴いた瞬間に分かるマイケル・マクドナルド氏がヴォーカル。シンプルなリズムトラックに昔懐かしいギターのバッキングと、うっすらと覆う柔らかいパッドサウンドがアナログっぽくて好印象。中間のミュートトランペットのソロと、ラストのサビでのコーラスワークがまたいい。
05. She's So Shy
ジェイミー・キメットという女性がヴォーカル。ゆったりとしたテンポにたゆたうようなハスキーな声がよい。
中間でのソロは、オーバーハイムのようなソフトな音色が出色の良さ。聴きもの。
06. Back To You
この曲は、シンプルなイントロの8ビートを聴いただけで分かる、このタイトなスピード感溢れるグルーヴ。マスター・ジェフのプレイだ。それに絡む引き締まったベースはマイケル。そう、ポーカロ三兄弟の揃い踏みである。
時期的には80年代中盤、" Isoration "の頃だ。4小節ごとに入るジェフの細かいフィルインを聴くたびに
「これこれw。」
と嬉しくなる。中間もTOTOホーンっぽいアナログライクなシンセサウンドが心地よい。後半以降の細かいオルガンサウンドのレイヤーは氏の真骨頂。
07. Face of A Girl
ゆったりとした曲の中間部に流れるギターソロ。もうこの音色とフレーズ...わずか8小節だがルカサー師匠である。珍しくディレイの効いたサウンドはやはりいい。
11. NIght of Our Own
再びのマイケル・マクドナルド氏のヴォーカル。全編に流れるストリングスとアコギのアルペジオが細かい。今のシンセなら可能な音作りである。中間の盛り上がりはさすが!
他にも捨て曲なしのいいアルバム。時おり聴けるシンセソロパートの音色とフレージングはさすがの貫禄。細かいフレーズを積み重ねていく多層的な構造は、非常に参考になった。そうか、Motifなら出来るのか...30万だなorz。